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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)368号 判決 1954年12月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人等の上告理由は末尾添附の別紙記載のとおりである。

隠居者の財産留保は家督相続人との合意の下に為された時は確定日附がなくとも少なくとも当事者間においては効力あるものと解するを相当とする。右の如く確定日附は当事者間の効力において絶対不動の要件ではない。従つて原審認定の如き事実の下に法律に通暁しない中村清之亟が有効に留保を為し得たものと信じ所有の意思を以て本件不動産を占有した事は無理からぬことというべく、これにつき過失なしとした原審の判断は正当である。なお財産全部の留保は相続人の遺留分について問題を生ずるだけで、留保を全面的に無効ならしめるものではないと解すべきである。以上の各点に関する大審院の判例は必ずしも確定的ではない。反対の趣旨と思われるものもないではないがそれはこの此際改めるものとする。それ故以上の諸点についての論旨は採用し難い。その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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